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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第14主日

《A年》
 18 いのちあるすべてのものに 
【解説】
 この答唱句は、詩編から直接取られたものではありませんが、詩編145全体の要約と言うことができます。この、
詩編145は、詩編に7つあるアルファベットの詩編(他に、9,25,34,37,111,112,119。 詩編の各節あるい
は数節ごとの冒頭が、ヘブライ語のアルファベットの順番になっている)の最後のものです。表題には「ダビデの賛美
(歌)」とありますが、この「賛美」を複数形にしたのもが「詩編」(ヘブライ語でテヒリーム)とですから、詩編はとりもな
おさず「賛美の歌集」と言うことになり、詩編はまさしく歌うことで本来の祈りとなるのです。
 なお、詩編の2節は367「賛美の賛歌(Te Deum)」の11節で歌われます。また、10節(詩編唱の5節前半)と15
および16節(詩編唱の7節)は、教会の、公式の「食前の祈り」として用いられています。
 旋律は、ミサの式次第の旋法の5つの音+司祭の音からできています。同じ主題による123「主はわれらの牧者」
がミサの式次第の旋法の5つの音だけだったのに対し、ここでは司祭の音であるB(シ♭)が加わりますが、ミサとの
結びつきと言う点での基本的なところは変わりません。それは、この二つの答唱詩編で詩編唱の音が全く同じである
ことからも分かると思います。なお、この点については「答唱詩編」のページも参照してください。
 冒頭の「いのちある」では旋律で、最低音のD(レ)が用いられ、バスは、最終小節以外は順次進行が用いられるこ
とで、すべての被造物に生きるための糧=恵みが与えられる(申命記8:3参照)ことが表されています。終止部分で
は、バスで最低音が用いられて、それが顕著になると同時に、ことばも深められます。一方、「主は」に最高音C(ド)
を用いることで、この恵みを与えられる主である神を意識させています。この「主」の前の八分休符は、この「主」のア
ルシスを生かすと同時に、「すべてのものに」の助詞をも生かすもので、この間の、旋律の動きはもちろん、精神も持
続していますから、緊張感を持った八分休符ということができます。なお、「ものに」は、「の」にそっとつけるように歌
い、「にー」と伸ばすことがないようにしましょう。
 詩編唱は、4小節目で、最低音になり、低音で歌うことで、会衆の意識を集中する効果も持っています。
【祈りの注意】
 答唱句は、旋律の動きはもちろん、歌われることばからも、雄大に歌うようにします。いろいろなところで、聞いたり
指導したりして感じるのは、

1=答唱句が早すぎる
 2= のっぺらぼうのように歌う

の二点です。指定された速度、四分音符=60は、最初の速度と考えてみましょう。二番目ののっぺらぼうのように
歌うことのないようにするには、「すべてのものに」を冒頭より、やや早めに歌うようにします。また「いのちある」を付
点四分音符で延ばす間、その強さの中で cresc. することも、ことばを生かし、祈りを深める助けとなります。
 後半の冒頭「主は」で、元のテンポに戻りますが、だんだんと、分からないように rit. して、答唱句をおさめます。
なお、最後の答唱句は「食物を」の後で、ブレス(息継ぎ)をして、さらに、ゆったり、ていねいにおさめるようにします。
この場合「食物」くらいから、rit.を始めることと、答唱句全体のテンポを、少しゆっくり目にすることで、全体の祈りを
深めることができるでしょう。
 第一朗読のゼカリヤの預言は、キリストが謙遜によって、平和をもたらされる様子が語られます。イエスの弟子たち
の言動を見ると、先生は、必ず、異邦人の支配から、イスラエルを解放してくれるのだ、と考えていたようですし、それ
ゆえに先生にしたがっていた人々も多かったようです。しかし、「神は恵みとあわれみに満ち、怒るに遅く、いつくしみ
深い」方ゆえに、その一人子も、父の前に謙遜で、柔和な方なのです。つまり、キリストと同じように、神の前に素直
にへりくだり、幼子のような者にこそ、神の国は示されるのだと言ってよいでしょう。
 この詩編を味わうと、素直に神の前にへりくだった者の応答と、信仰告白が語られているように思われます。
【オルガン】
 年間主日の答唱詩編としては、恐らく、一番多く歌われるものでしょう。また、解説にも書いたように、ミサとの関わ
りが最も強い、答唱句です。基本的なコンビネーションである、フルート系の8’+4’を使うのがよいでしょう。オルガ
ンの前奏が早すぎないこと、レガートを心がけることが最大のポイントです。解説で書いた祈りの注意を、どのように
オルガンの音で、祈りとして表すか。オルガン奉仕者が、よく祈っているかが、問われる答唱詩編だと思います。

《B年》
 116 主は豊かなあがないに満ち
【解説】
 詩編123は、都に上る歌=巡礼の歌の一つで、全部で4節と、詩編集の中では詩編117の次に短いものの一つ
です。最初、主語が「わたし」で始まりますが、すぐに(2節から)「わたしたち」に変わります。バビロン捕囚から帰還
した民が、周囲のさげすみとあざけりに耐え忍びながら、神に対する深い信頼を歌ったものです。
 答唱句は、詩編唱と同じ歌い方がされるものの一つ(他に「神よ あなたの顔の光を」、「父よ あなたこそ わたしの
神」)です。バスは、常にD(レ)で持続しますが、この、答唱句の確固とした信仰告白を力強く表しています。
 詩編唱は、第1・第3小節の終止音の四分音符(主に「、」)が、その前の全音符から、2度高くなっており、第2・第
4小節では(主に「。」)2度下降しています。さらに、各小節の冒頭の音が順次下降しており(1小節目=A(ラ)、2小
節目=G(ソ)、3小節目=F(ファ)、4小節目=E(ミ))、文章ごとのバランスをとりながら、ことばを生かしています。
 この詩編唱は、当初、『典礼聖歌』(分冊第二集=31ページ)で、旧約朗読後の間唱として歌われた「主よ よこし
まな人から」(詩編140)に用いられていました。現在、『典礼聖歌』(合本)で歌われる詩編唱の第3・第4小節が
「主よ よこしまな人から」の答唱句として、第1・第2小節が、同じく詩編唱として歌われていました。
 「主よ よこしまな人から」が作曲されたのは、典礼の刷新の途上だったため、新しい詩編や朗読配分、などが確立
したときに、この曲は使われなくなり『典礼聖歌』(合本)には入れられませんでしたが、新しい答唱詩編である「主は
豊かなあがないに満ち」の詩編唱に受け継がれました。
【祈りの注意】
 解説にも書きましたが、答唱句は、詩編唱と同じ歌い方で歌われます。まず、一番の基本ですが、はじめは、きび
きび歌い始め、小節線の前で少し、rit. し、「いつくしみ」に入ったら、テンポを小戻しして、最後は、丁寧におさめま
す。答唱句のことばは、確固として信仰告白ですから、芯のある、力強い、P で歌い、最後の答唱句は、最初から、
テンポをゆっくりして(ただし、だらだら歌うのではありません)、PP で歌います。細い線ですが、しっかりと神のもと
へ、突き進む祈りとなるように歌いましょう。
 全音符の部分は、すべて八分音符の連続で歌います。「豊かな」と「あがない」の間があいているのは、読みやすく
するためです。また、「あがないに」と「満ち」、「いつくしみ」と「深い」の間があいているのは、楽譜の長さ(答唱句と
詩編唱の)をそろえたための、技術的な制約によるもので、これら赤字のところで、息継ぎをしたり、間をあけたり、赤
字のところを延ばしたりしてはいけません。下の太字のところは、自由リズムのテージス(1拍目)になります(*は八
分休符)。
 主はゆたかなあがないに満ちー*|いつくしみふかいー*
 第一朗読の「エゼキエルの預言」は、バビロン捕囚の時、イスラエルの民に使わされたエゼキエルが回心を呼びか
けるものです。詩編唱は、この、神からの回心の呼びかけに対して歌われます。神からの回心の呼びかけに答える
民には、神のあわれみが必ず注がれる、という信頼があるのです。
 なお、二回目には「栄唱」が歌われますが、もともと、詩編には栄唱があったわけではありませんでした。新約の民
=キリスト者が、詩編を自分たちの祈りとするために、この栄唱を付け加えました。それは、ただ、詩編の祈りをキリ
スト者の祈りとするだけではなく、詩編に新約のメシア的な意味づけをすることでもあるのです。
【オルガン】
 祈りの注意にも書いたように、全体は P ないし PP で歌いますから、フルート系の8’を基本にし、ペダルは、16’
+8’のやはりフルート系にします。会衆の人数が多い場合には、4’を加えるより、Swell を主鍵盤につないで弾くと
良いかもしれません。最後の答唱句は、場合によっては、こちらも Swell にし、扉を閉めるのも効果があるでしょう。
 会衆の人数と、声の出し方、祈り方によって、工夫が必要です。

《C年》
130 主をたたえよう
【解説】
 この詩編66は大きく二つに分けられます。前半の1-12節は主語が「わたしたち」で、全世界に向かってイスラエ
ルになされた神の救いが呼びかけられます。後半の13-20節は主語が「わたし」となり、個人的な救いに対する
言及とそれに対する感謝と賛美が語られます。この主語の対照は、巡礼者が集まる民族的な祭りが背景にあり、こ
のような祭りでは、最初に共同体の感謝が行われ、続いて、個人的な感謝の奉献が行われたからだということです。
 さて、この「主をたたえよう」はすべての答唱句の中で、最も多くの詩編唱が歌われます。答唱句は、詩編136:1
〔131〕から取られています。この詩編は、グレゴリオ聖歌では復活徹夜祭に歌われます。八分の十二拍子の答唱
句の冒頭は、トランペットの響きで始まります。なお、『典礼聖歌』合本では、最初、テノールとバスは、H(シ)です
が、『混声合唱のための 典礼聖歌』(カワイ出版 2000)では、四声すべてFis(ファ♯)-Dis(レ♯)-Fis(ファ♯)-
H(シ)-Dis(レ♯)となっています。この、ユニゾンのほうが、力強い響きに聞こえると思います。
 「主をたたえよう」では、バスがGis(ソ♯)からFis(ファ♯)へ下降することで、ことばを延ばす間に、和音も二の和音
から四の和音へと移り、さらに「主はいつくしみ」までE(ミ)からDis(レ♯)へと深まります。その後は、旋律も和音も
落ち着いており、神のいつくしみの深さと限りないあわれみを穏やかなこころでたたえながら、答唱句は終わります。
 詩編唱は、冒頭、最高音のH(シ)から、力強く始まります。主に、詩編唱の1節全体で、一番重要なことばが多い
第三小節は、最も低いDis(レ♯)を用いることで、重厚さと、低い音への聴覚の集中を促しています。詩編唱の最後
は、主音Fis(ファ♯)で終わり、そのまま、答唱句へとつながります。
【祈りの注意】
 答唱句の旋律は、主音:Fis(ファ♯)⇒旋律の最低音:Dis(レ♯)⇒主音:Fis(ファ♯)⇒旋律の最高音:H(シ)と動
きますから、この旋律の上昇の力強さを、全世界への呼びかけの強さへと結びつけましょう。八分の十二拍子のこの
曲は、八分の六拍子の曲と同様に、八分音符ではなく、付点四分音符を一拍として数えましょう。「主をたたえよう」
の「た」を、心持早めに歌い、続く八分音符への弾みとすることで、全体のテンポが引き締まります。
 「たたえようーーー」と延ばす間、さらに cresc. を強めることで、呼びかけが、すべての国に広がるでしょう。このと
き、バスがGis(ソ♯)からFis(ファ♯)へ下降することで、和音が変わりますから、他の声部はしっかり呼びかけを続
け、バスは地球の裏側にまで、この呼びかけを深めるようにしましょう。その後、八分休符がありますが、この休符
は、次の「主」のアルシスを生かすためのものですから、きちんと、入れてください。
 この、「主」がアルシスで、よく歌われると、このことばがよく生かされるばかりではなく、続く、滑らかな旋律の信仰
告白が、ふさわしい表現となります。最後の「深く」の四分音符が、必要以上に延ばされるのをよく耳にしますが、そ
れでは、答唱句の重要な信仰告白のことばが、途中で途切れてしまい、答唱句全体のしまりもなくなります。ここ
で、やや、 rit. するからかもしれませんが、この rit. は、ことばを生かすためのものですから、「その」に入ったら、す
ぐにテンポを戻しましょう。あくまでも、「ふかくーその」は、八分音符三拍分の中であることを忘れないようにしてくだ
さい。最後は「そのあわれみは」くらいから徐々に rit. して、答唱句を締めくくります。「えいえん」で、八分音符を五
拍延ばす間、まず、dim. (だんだん弱く=いわゆるフェイドアウト)しますが、きちんと五拍分延ばしてください。その
間、作曲者も書いていますが「神様のことを」、神のいつくしみの深さもあわれみも永遠であることを、こころに刻み付
けましょう。最後の「ん」は、「さーぃ」と同じように、「え」の終わりにそっと添えるように歌います。
 この日の「ことばの典礼」では「平和」が主題となっています。第一朗読ではエルサレムにもたらされるイスラエルの
回復と繁栄が語られています。イスラエルの回復、エルサレムの繁栄は、地上の国家としてのレベルではなく、すべ
ての民へのしるしです。それゆえ、詩編唱の1節では「すべての人はあなたを伏しおがみ、み名をたたえて喜び歌う」
と言われるのです。たびたび指摘しているように、教会は(イスラエルも本来は)、神と人類との親密な交わりのしるし
であり、人類一致の道具(『教会憲章』1項参照)であって、それ自体で完結するものではないことをわたしたちは知
っていなければなりません。
 今日の詩編は、わたしたちに行われた神のわざを、すべての人が知る(体験する)ことで、神が、また、神のもらさ
れる「平和」をすべての人がたたえることを促しています。わたしたちが互いに愛することで、すべての人が、神とキリ
ストを知ることができるのです。詩編のことばを味わいながら、わたしたち自身、それぞれの共同体がそのような共同
体になっているかを、改めて、考えてみたいものです。
 なお、今日の閉祭(派遣)の歌には、同じ作曲者による、「アシジの聖フランシスコによる 平和の祈り」をお勧めしま
す。楽譜はオリエンス宗教研究所から発行されている「典礼聖歌 合本発行後から遺作まで」に所収されています。
【オルガン】
 前奏のテンポのとり方、模範が、会衆の答唱句の祈りを左右します。上記の祈りの注意を、前奏でしっかりと守っ
てください。言い換えれば、オルガン奉仕者の答唱句に対する、情熱が、前奏、伴奏を決め、それが、共同体全体の
答唱句のあり方を決めるのです。オルガン奉仕者が、ただ、オルガンを弾いていればよいというものではないことが
分かると思います。答唱句の性格からは、鋭くないものであれば2’を入れてもよいでしょうか。人数によっては、少し
強い4’にしておくとよいでしょう。詩編唱も、力強く歌われますので、声量が豊かな人の場合には、フルート系の4’を
入れて、Swell を閉める方法も考えられます。詩編先唱者の声量とのバランスを考えましょう。





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